月に濡れたふたり 歌手:安全地帯 作詞:松井五郎

1988年3月、安全地帯17枚目のシングルとしてリリース。ボサノヴァの軽やかなリズム、しっとりとしたシンセの音、合いの手の様に入るガットギター、水面に映る月灯りを連想させるようなナンバーです。
歌詞はこちらで。
玉置浩二氏がワイドショーのインタビューで「歌のワールドカップがあるなら日本代表は自分だ。」と発言した事がありました。
彼の奇行が注目されていた事もあり、世間では、ただのトンデモ発言だと一笑に付されましたが、私はあながちデタラメではないと思います。
玉置氏はハードロックからバラード、演歌まで歌いこなせるシンガーです。
個人的には日本の男性シンガーでは3本の指に入る位、歌が上手いと思います。
その玉置氏の表現力が如何なく発揮されたのがこの曲です。
恋人に上手く想いを伝えられないもどかしさを綴った歌詞になっています。
1コーラス目は今の二人の現状です。
言えない 言えない 胸のささやきが
引用
そばにいても 遠い瞳(め)をしてる
つらくなるほどためいき もうつかないで
そばにいるのに遠くを見つめる恋人。出てくるのはため息だけ。心ここにあらずです。こちらの言葉も全て拒絶されるような恐怖から言い出せませんね。
つよく抱きしめても どんなにみつめても 届かない心が揺れるだけ
引用
たとえ傷ついても すべてをなくしても もう嘘はつけないから
打っても響かない恋人に対し、きっと主人公は心折れそうになっているでしょう。それでも「嘘」をつけないと、素直な想いを伝えようと秘かに誓ったのではないでしょうか。
そして2コーラス目。主人公の胸の内です。
見えない 見えない いまはあなただけ
引用
とぎれかける 夜がこわかった
何も知らないふたりに もう戻れない
心ここにあらずの恋人。彼女の本当の姿だけが今の主人公には見ることができません。もう昔の二人ではないのです。
なつかしい昨日より 夢みる明日より たしかな今だけが ほしいから なによりもやさしく 涙よりもはやく 好きだとつたえたくて
楽しかった過去、夢のある未来。そんなものは主人公にとってどうでもいいのです。今、ここにいる二人の気持ちが通いあう事がなによりも大切なのですね。
言えない 言えない 胸のささやきが
引用
夢のように 消えていかないで
伝えようと誓った素直な想い。それでも恋人が発する「寄せ付けないオーラ」の前で躊躇しているのでしょう。このままでは気持ちは儚く消えてしまうかもしれないと、自信を失っている主人公の姿が見えます。
実際に玉置浩二氏の歌声で聴くと、切なさが何倍にも増すのは彼の表現力の凄さだと思います。やはり「歌のワールドカップ」日本代表です。