チェリー 歌手:スピッツ 作詞:草野正宗

スピッツが1996年にリリースした曲です。そのタイトル名から、春先に各メディアのリクエスト番組等でよく流されます。
歌詞はこちらで。
チェリー(さくらんぼ)という可愛らしいタイトル名通り、春先に新しい出発を迎える青年の歌です。作詞した草野正宗氏も「桜は春に咲く花、何かから抜け出す、出発するようなイメージ=チェリーボーイ」という意味でこのタイトルになったと発言しているとか。
出だしの「君を忘れない」の部分。新しいスタートで離れ離れになってしまう彼女。何故「君を忘れない」と宣言するのでしょうか?
答えはAメロ最後にあります。
きっと想像以上に 騒がしい未来が僕を待ってる
引用元
の部分です。
これから進む道は、未知の部分で、それが楽しいのか苦しいのか、はたまた忙しいのか暇なのかすら分かりません。彼にとって不安で胸がいっぱいなのです。
先の見える進路なら真っ直ぐな道ですが、まったく予想できないので「曲がりくねった道」と表現しているのでしょう。恐らく、踏み込んでしまうと彼女の事を考える余裕すらないかもしれません。
だからこそ、どんな過酷な状況になったとしても、「君を忘れない」と宣言しているのです。
彼女に心配をかけない為に「辛い」や「苦しい」という言葉を使わず「騒がしい」と表現しているところに彼の優しさが感じられますね。
サビの部分、
愛してるの響きだけで 強くなれる気がしたよ
引用元
ささやかな喜びを つぶれるほど抱きしめて
そんな不安の塊を抱えた彼は彼女の「愛してる」の言葉に勇気を奮い立たせようとしています。今の彼にとって彼女の存在は「ささやかな喜び」なのです。不安をかき消すように彼女を強く抱きしめます。「つぶれる」程強く。
更に彼は彼女に不安を感じさせぬような心配りを見せます。
2コーラス目後の
心の雪でぬれた頬
引用元
悪魔のふりして 切り裂いた歌を
春の風に舞う花びらに変えて
の部分です。
涙を「心の雪」とし、内にある不安さを「歌」と表現して、それらを切り裂いて桜の花びら(チェリー)のように撒き散らして、自らの花道を飾ろうとしています。
全てが彼女に心配をかけないようにしようとする優しさに感じるのです。
そしてラストの部分、
ズルしても真面目に生きてゆける気がしたよ
引用元
これから進む道がどんなものになるか分からないけど、真面目だけじゃなくズルさもある「自分らしさ」で生きていっていいよね?と彼女に問うているのではないでしょうか。
青年の初々しさと切なさと優しさが詰まった一曲だと思います。