島人ぬ宝 歌手:BEGIN 作詞:BEGIN

2002年5月、BEGINの23枚目のシングルとしてリリース。故郷、沖縄の歌を数多く歌っている彼らですが、その中でもこれは代表曲のひとつです。
歌詞はこちらで。
以前、那覇の歓楽街を紹介したテレビ番組で、かなり高齢の流しの方が三線(沖縄・奄美の楽器)を弾きながらこの曲を熱唱されていました。若いミュージシャンの曲を、高齢の方が歌うという事が本土の常識からしたら考えられず、その光景に目を奪われてしまいました。
BEGINは沖縄の心を歌う、聴き手の年齢に関係ない「県民的歌手」なのでしょう。
沖縄民謡とブルースを融合させたような曲とボーカルの比嘉栄昇の歌声からは、青い空、海、色鮮やかなハイビスカスが連想され、潮の香りが漂ってくるような印象さえ受けます。でも、伝わってくるのはそれだけはありません。
沖縄は遠い昔より日本本土からの支配、太平洋戦争での唯一の地上戦、その後もアメリカの統治下等、辛く過酷な運命を辿った歴史があります。その沖縄の人達の悲しみもBIGINの曲からは伝わってくる気がします。
正に沖縄の「ソウル・ミュージック」です。
歌は島で生まれた主人公が、慣れ親しんだ物を見つめ直すというものです。
まず1コーラス目では「空」を取り上げています。
僕が生まれたこの島の空を 僕はどれくらい知っているんだろう
引用元
輝く星も 流れる雲も 名前を聞かれてもわからない
誰でも物心ついた時から見上げれば、空があります。そこには星が輝き、様々な形の雲が流れています。しかしそれらの学術的な名称を問われても、ほとんどの人が答えられないでしょう。
でも誰より 誰よりも知っている
引用元
悲しい時も 嬉しい時も
何度も見上げていたこの空を
どんな時でも必ずそこには空があり、星も雲も見守ってくれているのです。ずっと、ずっと今も変わらずに。
教科書に書いてある事だけじゃわからない
引用元
大切なものがきっとここにあるはずさ
星座の名前が何であろうと、雲の種類がなんであろうと、そんな事は関係ないのです。大切なのは言葉では表現し辛いですが、空がいつも見上げる場所にあってくれる事なのです。
2コーラス目は「海」
汚れてくサンゴも 減って行く魚も どうしたらいいのかわらない
引用元
時代と共に、少しずつ変わってゆく海。そこには島人の葛藤があるのではないでしょうか。
「自然の保護を望みながらも、文明が発展していく事を反対できない。なにをどうやればちゃんと自然と共存していけるのだろうか。」と。
テレビでは映せない ラジオでも流せない
引用元
大切なものが きっとここにあるはずさ
マスコミは取り上げないけど、島人の人達の中には、慣れ親しんだ海が姿を変えていく「悲しみ」がきっとあるのではないでしょうか。
そして3コーラス目は「唄」
トゥバラーマもデンサー節も 言葉の意味さえわからない
引用元
でも誰れよりも知っている
引用元
祝いの夜も 祭りの朝も
何処からか聞こえてくるこの唄を
トゥバラーマは想いを伝える掛け合いの歌、デンサー節は伝え教える教訓歌。昔から伝わる沖縄民謡だそうです。
昔から歌い継がれる唄で、歌詞の意味は分からないのに、聞くだけで悲しい気持ちになったり、ワクワクする唄ってありますよね。きっと「左脳」で聞いてるのではなく、「右脳」で感じとっているのでしょうね。
それぞれのパートで出てきた「空」「海」「唄」は大切な何かを主人公に教えてくれています。
「知識だけでは得られない人間の生き方を育んでくれるのが知恵である」という言葉を聞いた事があります。
与えられたものを覚えるのではなく、そこから何かを感じ、自身で考え血肉にしていく大切さ。
あのブルース・リーも映画「燃えよドラゴン」の中で言っています。「Don’t think. Feel!(考えるな。感じろ!)」と。
単に知識として吸収したものより、毎日の暮らしの中で深く感じとったものこそがその人の「一生の宝」になるのではないでしょうか。
そこを「島人ぬ宝」として表現するBIGINの曲はやはり沖縄の「ソウル・ミュージック」なんでしょうね。